KINO INTERNATIONALは今も現役の映画館で、お馴染みのカールマルクスアレイにあります。これは1980年、東ベルリンで公開された当時の様子。

サニーを演じたレナーテ クレスナーは、当時西ベルリンで開催されていたベルリナーレでみごと銀熊賞を受賞。そして、驚いたことに1983年には「ソロシンガー」というタイトルで日本公開になっている。あのピアノが、ギュンターフィッシャーのサントラが、日本の映画館で流れていたのかと思うとうれしくてたまらない。

映画「ひとりぼっちのサニー」

これほどヒロインのこころざしと音楽がピッタリとハマった映画を、私は他に知らない。

白いハンチングに毛皮のマフラー、黒のピンヒールブーツが降り積もった雪の上を気丈に歩く。リズミカルなピアノの高音が、冬の空気をより新鮮に、ベルリンを凍らせていく。向かう先は、本日初対面のバンド仲間が待機する倉庫。歌手サニーの再出発で、映画「Solo Sunny/ソロ サニー」は終わる。数あるDEFAフィルムの中でも3本指に入るくらい気に入っているこの映画は、「パウル&パウラ」「暑い夏」に比べたら、重く暗い雰囲気の映画かもしれない。

地方巡業するバンドにお払い箱にされ、愛する彼にも裏切られ、自殺未遂もして歌手を諦める。けれども地方のホテルの冴えないキャバレーで、ハンプティダンプティみたいな体格の双児のおばちゃんがコミカルに踊る様を観て、ぬけ殻みたいだったサニーが蘇るシーンがいい。「あぁ、私がやりたいことはやっぱり歌うことなんだ」という顔をしている。決して一流とは言えない場所でのエンターテイメントに、自分を見い出すところが好きで好きでたまらない。物事の本質ってとんでもない所に潜んでいるのかもなぁと思ったり、むしろそういう所にあるのかもと思ったり。


ちょいとシワが寄ってますが、閉館してしまった映画館からいただいたサニー。私が唯一持っているDEFAフィルムのポスター。

サニーのファッションセンスはいいですよ!今でもばっちり通用すると思う。チープシックでいやらしくない着こなし。舞台衣装はイマイチだけども。
それにしてもサニーが好きになった彼氏はいただけない。哲学者だかなんだか知らないけど随分いろいろと悟っちゃってて、浮気現場をサニーに見つかっても冷静沈着。後日の弁解も妙に論理的で血が通っていないみたいに無表情なんだものっ。そりゃあ、許せないですよっ。私の持ってきたシーツの上でナニするなっ!ですよ。だから、サニーはフッた訳ですよ、あたいはそう思うっ。でもね、許さなかった事に後悔するの、この娘ったらぁ(おすぎ風)。

と、感情的にもなったところで、この映画は違った側面からも楽しめる。ライザミネリが主演した映画「キャバレー」は、ナチス政権が迫り来る1920年代後半から30年代前半あたりのベルリンの様子が、大衆娯楽と共に鮮明に描かれている。ええじゃないか的世相は当時ならではの雰囲気で、それから約半世紀時をずらした東ベルリンでは世の中も大きく変わっている。けれども歌い手という同じ職業のヒロインの生き方を重ねずにはいられない。

サリー(ライザミネリ)とサニー。名前も似てるけど、サニーが羽織るバスローブもサリー同様の着物柄。ポツダムのフィルムミュージアムにはサニーの部屋があって、マレーネデートリッヒと肩を並べるように彼女の衣装や小物が展示してある。

そんなわけで話は初めに戻りまして、あのピアノの音色は、彼女の決意を揺るぎないものにしながら、失ったものも多い今までの歩みを全て表している。そしてちょっぴり爽快な気分にしてくれるのはなぜだろう。ペパーミントのガムみたいに少し涙目になるんだけどスーッとするのだ。2004.5.14



HOME
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
Copyright Yoko Yamada 2004 all rights reserved.
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -